ものすごい軽くて脆くて耐久性のないランニングシューズがある
今から数年前のこと。あるランニングシューズが密かに発売されていた。当時日本での発売が殆どと言っていいほど無く、一部のマニアックなランナーの間で
「なんだこれ?!」
「ふざけているようにしか見えない!」
「うわあああすげえええ飾りてええええ」
というおおよそランニングシューズに対する反響とは思えないコメントが多く見られ、騒がれた製品があった。
この製品には、「総走行距離100kmの耐久性しか持ち合わせていない」という説明書が添えられている。一流のマラソンランナーの履く軽く薄い、レースの為のシューズですら、上手く使えば300km程度は使用できる。それなのに、このシューズは100kmしか持たないという。こんなシューズが発売されていて、しかも最近になって再販されているらしいというのだから驚きを隠せない。そのシューズの写真がこちらである。
このランニングシューズの名は、「メイフライ」。NIKEの、一見すると普通に見えるが、ものすごいことになっているシューズである。
まず、アッパー(紐を通している靴の上部分)が、ものすごく薄いナイロン1枚だけ。それを、ソール(クッションになっている靴の下部分)とくっつけているだけという、シンプル過ぎる構造。最近の高機能なランニングシューズとは明らかに一線を画している。
ここまでこのシューズはおかしい、と言ったような事を書いているけれども、実はちゃんとこのような形になった理由が存在している。
この製品はNIKE創設者の1人、ビル・バウワーマンの名前を冠している「バウワーマン シリーズ」と呼ばれる物であり、「バウワーマンの理想を具現化したランシングシューズ」というウリで作られた製品である。速く走ることを追求するために極限まで軽量化にこだわり、余分なサポート性や一般的なシューズ本来の耐久性を削った結果、異常に軽くて脆くて耐久性のない、速さに特化し過ぎたランニングシューズとなったのである。
また、上の画像を見てもらえればわかるのだが、かかと部分に時間のような欄と空白の欄があるのがわかる。これは元々、このシューズが「100kmマラソンの為のシューズ」というコンセプトで作られたシューズであるため、その記録と大会名を記入できる欄が設けられており、そのため100kmまでの耐久性しか持ち合わせていないのである。ちなみに、メイフライというのは日本語で蜉蝣(かげろう)という意味であり、まさしくこのシューズそのままのネーミングとなっている。
本来の用途でいったい何足が使われたのか…。とにかく、こんな変なシューズも存在している、というお話。*1
おわり。
*1:ちなみにわたしは一度だけ履かせて頂く機会があったのだけど、本当に軽い。履いているのがわからないくらいの軽さだった。