想像ラインマーカー



ノートは綺麗であれば綺麗であるほど評価がいい。

受けがいいというのはとても重要な事で、あまりいいとは言えない成績を底上げしてくれるキーアイテムだ。

一口にノートが綺麗だと言ってもいろいろある。字が綺麗だとか字間の取り方だとか、そういうものは一朝一夕では身につかない。そして俺には出来そうもない。やはり手っ取り早いのは色だ、色。適当に3色くらい使って、適当に教師の声の大きかった所をピックアップして色変えたりアンダーライン引いたりすれば、それだけでいい。理解っていなくたっていいんだ、そういう感じである程度見栄えさえ良ければ評価が貰える。


無意味だな、こんなの。そもそも、気に入らない。成績がそんなに重要か?いや、こんなことを言ってる間にも、周りの奴らはどんどん俺を置いていくんだ。そして俺は追いつこうとしない。こうやって広がっていくわけだ、格差っていうのは。「やらない」から「出来ない」。少なくとも、俺にとってはそういうことだろう。

今日も俺は色をつける。ただただ意味もなく線を引く。我ながら綺麗なノートだ。教師は今日も淡々と話し続ける。黒板は白くなり続ける。なんて日常、つまらないな。

ふと、窓際の俺の席に、雨が落ちる。窓を閉める。空が光る。落ちる。音が響く。また光る。光る。光る。

意味は、あるのだろうか?ふと手を止める。俺のノートの赤線のように空に引かれ続ける雷を見る。街に、空に、何にも邪魔されずに色を付け続ける。俺とは違う。


チャイムが鳴る。今日も、ノートを書ききった。適当だとはいえ、それなりに疲労感は残る。さっさと帰って寝てしまいたい。

雨はまだ降り続いている。まだ空は光り続いている。光る空を見上げてみた。相変わらず、自由な線を引き続けている。俺はペンを取り出し描いてみる、色を付けようとする。俺には見えている、俺だけの線が見える。

俺だって、変わりたかった。出来るようになりたかった。そうなれない自分がいるだけで。変われない自分がいるだけで。

空はもう光ってはいなかった。雨も上がっていた。それでも俺は、空にペンを翳して、俺だけに見える線を書き続けた。ただただ無心に。誰にどう見えたとしても、俺はそうしていたかった。


翌日、俺のノートには俺だけの色が混ざっていた。


かしこ